鎌田慧さんからのコメント
大地から引き剥がされた人間の生活が、いかに根拠を喪ったか。
福島原発爆発事故に故郷を追われた人びとのさまざまな悲劇が伝えられている。
このドキュメンタリー映画は、決して人間的なものではなかった。
カネ、効率、従属、屈服など、工業社会の犠牲になっていた都会の生活が決して人間的なものではなかった、とあらためて思い知らせてくれた。
それが原発事故の悲惨が示した、唯一の希望である。
海老原 よしえさん(シンガーソングライター)
日常がそこにあった。
自然と向きあう、優しいまなざしと時間の流れがあった。
いくつもの四季をめぐり、人類以外の命と向き合って生きてきた方達がそこにはいた。
放射能は、エネルギービジネスとは遠く、大地にしっかりと足をつけて生きてきた人たちを直撃し続けているんだ。
この言いようもない、”悲しみ”なんて言葉では表せないこの痛みを受け続けている人たちを横目に 私たちは”電気”という恩恵のためなら手段を選ばないのか?
電気のためなら今福島や周辺で起きているこの悲劇は仕方ないというのか?
狂っているよ。
「いのち」と「電気」をひきかえるなんて。
おかしくない?おかしいって思わないの?思わないの?ほんとに?
私は原発はもう2度と稼働させてはいけないと思う。
一人一人が本当に自分の事として考えなくてはいけないと思う。
もう、このような悲しみ、絶望、を2度と味わうことがないように。
神田香織さん(講談師)
福島って人も自然も「豊か」なんだと思わせる映像ですね。
私が生まれ育った福島の自然が手を伸ばすとそこにある。山海の味覚にあふれ、山菜も薬草も、モリ アオガエルも川の魚も海の幸も。それらがことごとく汚されてしまった…。
いわきに住んでいた10年前、漠原人村の噂を聞き、一度尋ねたいと思っていました。このような形で「訪ねる」ことになってしまったけど、自然体で踏ん張っている姿にエールを送りたい、実際に現地を訪ねたい。稲穂をなでるさわやかな風 が、観ている私にも吹いてきた。
第二の福島を許してはいけない。その為に一人ひとりが何をすべきか、静かに問いかけるように。
山田征さん
加藤鉄さんの作品は、前作「田神有楽」を何度も観ました。
六ヶ所村再処理工場建設に伴い、村人すべてが立ち去った集落に一人残り、これまでと変わらず米を作り、社を護り、舞をまい、核燃反対の意志を貫き通す一人の老人、小泉金吾さんの姿を描いた作品です。
小泉さんは同じ六ヶ所村尾駮沼でアサリ漁を続ける友人に、「おまえ沼の神になれ、おれは田の神になる・・・」と呼びかけます。
その淡々とした映像が忘れられません。
今回の「フクシマからの風」の中にも、同じ息づかいをする人々の姿が捉えられていて胸に迫ります。
ひょうひょうと吹く風・・・。
失われてしまったものは何か・・・。
岸友美子さん
事前知識は、全くなしで来ました。
最初に思ったのは、「えらく不親切な映像作品やなー」です。
しかし製作された方の意図は、「用意された答えを伝えたい訳ではなく、一人ひとりが深く考えるきっかけになって欲しい」のだと思います。私がこういうふうに撮るとしたらそういう風に考えますから。普段親切なドキュメンタリーに慣れている分疲れる作品でした。
さて本編感想です。メディアを通じて処理された情報ではなく、福島の方々の生の声や生活をずっと見たいと思っていましたから、まずは良かったなと思いました。切り口となった4人の方々が、個性的なのでちょいと面食らいました。
4人の方々の言葉で、1番心に響いたのはマサイさんの「人類は皆加害者」という言葉です。常々そう思っていたので、「よしっ!よく言った」と思いました。原発に関して、意識があったにせよ、無知だったにしろ罪は罪です。まずは、目を逸らさず、その現実に目を向けなきゃ、堂々巡りだと思います。
無知といえば、チェルノブイリのことは、何年も前から勉強していたのに、自国の原発のことは、こうやってことが起こるまで何も知りませんでした。私達自身や子々孫々、海や川や森や生物達に対して、申し訳のないこととなりました。
だからこそこれからは、必死こいて変わっていかないといけないと思います。
一応、昨夏はエアコンは無使用、冬は電気毛布2枚に厚着、シャンプー、リンス、ボディーソープは無添加石鹸にし、座禅断食に行って小食にし、生活も少欲知足で清貧に楽しくゆっくり生きてこうと徐々にやっています。就職先もそういう条件で選びました。
後は、「国際環境NGOグリーンピース」の脱原発プロジェクトに署名したり、情報を得たりとささやかながら行動しています。とまあ、たいしたことはしていませんが、私にとって無理のないペースで、良心の咎めもないので満足しています。
今回のことが起こり、皆さん様々なアクションを起こしていますが、本当に世界を変えるのは、この作品に出てくるような何気ない優しさを、人や動物や自然に分け与えることができる人達の束となった力なのかなーと、そうであって欲しいと思います。
コメントしだすと切が無く、まとまらないのでもう引き上げます。
最後になりますが、出演した皆さん、製作者の方々、上映して下さった皆様に感謝します。これからも、折に触れて、こういった作品を鑑賞し、良い生き方にしていく糧にしたいと思っています。
これからも、風の中に溶けてしまう声を掬い上げて、また届けて下されば嬉しく思います。
佐藤宏美さんからの応援メッセージ
私は福島県で産まれて、24年間そこで育ちました。今は福島を出て京都に来て十年になりますが、福島を離れてから福島の素晴らしさを実感しました。海の幸、山の幸、果物に恵まれたhappyilandです。 福島第一原発の爆発事故から始まったように思っていました。でも、本当は自然と人類の共存という問題。人間社会の発展と思われていることの問題。原発事故以前から存在している問題ですね。 私はジブリの風の谷のナウシカが大好きなのですが、とても重なって見えます。人間が汚した地球を結局は自然界が自らの力で浄化している。私も地球を汚染した加害者の意識を持ち、自然と共存する生き方をしていきたいです。
土本基子さんからの応援メッセージ
一味違った原発映画である。(監督の加藤鉄さんは、原子力施設に反対して、六ヶ所村から立ち退きを拒否し続けた故小泉金吾さんに肉薄した「田神有楽」(2003年)を作っている。
そのあとも、青森県平内町に住み反原発運動を続けて来た。
前作の、小泉金吾さんへの惚れ込みようと取材の深さに驚いたものだが、今回もそれが十分にみえる。
飯館村と川内村の古老たちの話は、土に生きる智慧と工夫に溢れていて面白く、思わず話に引き込まれ、笑いさえ誘う。
また獏原人村の住人の正気の声音に私は心地よく目を開かれた。
そしてラストシーンの蛍の群棲地に佇む女性の澄んだ声が、草木をゆする風の音とともにいまも耳から離れない。
心にしみいる映画である。
ぜひ、多くの方にこの映画の時間に浸ってほしいと願っている。